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人でなしの恋

・・・彼は「雨月物語」は全篇どれもこれも好きだった。あの夢のような散文詩と、それから紙背にうごめく、一種の変てこな味が、たまらなくいいというのだ。その中でも「蛇性の淫」と「青頭巾」なんか、よく声を出して、僕に読み聞かせたものだ。

下野の国のある里の法師が、一二、三歳の童児を寵愛していたところ、その童児が病のために死んでしまったので「あまりに歎かせたもうたままに、火に焼きて土にほうむることもせで、顔に顔をもたせ、手に手をとりくみて日に経たまうが、ついに心みだれ、生きてある日に違はずたはむれつつも、その肉の腐りただるをおしみて、肉を吸ひ骨をなめ、はた啖いつくしぬ。」というところなどは、今でも僕の記憶に残っている。流行の言葉でいえば変態性欲だね。Rはこんなところがばかにすきなんだ、今から考えると、先生自身が、その変態性欲の持ち主だったかもしれない。

 

・・・しかし、その当時の私は、恋に眼がくらんでいたのでございましょう。私の恋敵が、相手もあろうに生きた人形ではなくて、いかにも名作とはいえ、いかに名作とはいえ、冷たい一個の人形だとわかりますと、そんな無生の泥人形に身替えられたかと、もう口惜しくて、口惜しいよりは畜生道の夫の心があさましく、もしこのような人形がなかったなら、こんなことにもなるまいと、はては立木という人形師さえうらめしく思われるのでございました。(江戸川乱歩『人でなしの恋』)

 

ピュグマリオン・・・ギリシア伝説で彫刻の巧みなキュプロス島の王。自作の

象牙の乙女像を愛したので、アプロディナがこれに生命を与えたが、子どもは授からなかった。

 

人形食い・・・美貌にだけに目をつけて人を選り漁ること、また、それをする人。

 

子供たちにとっての人形から大人たちが挿入のために適した穴が有るゴム製のダッチワイフにいたるまで同様のことが子供たちや大人たちがそれによって物神的な否認状況のもとでゲームを楽しむといった、あらゆる種類の生命のない対象にも当てはまらないだろうか (スラヴォイ・ジジェク『いまだ妖怪は徘徊している』)

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